最終更新日:1999.3.4

画像電子学会誌 論文・資料アブストラクト
第27巻 第6号(1998年12月)





一般文書通信への対応を目的とした拡張ファクシミリシステムのためのネゴシエーション処理

松木眞(NTTプリンテック株式会社)

ファクシミリ通信では,最適な通信機能の選択にネゴシエーション処理を使用している. 将来の拡張ファクシミリシステムでは,通常のラスター画像ばかりではなく,ワードプロセッサーなどで作成された文書を扱うことも必要になると考えられ, これらの文書を精度良く伝送するためには,使用アプリケーション名,バージョン, フォントなどの情報も必要となる.本論文では,これらを実現するため,アプリケーション名やバージョン, 国語,フォントなどの文書転送に必要な情報をネゴシエーションする拡張方法について提案するとともに, 送信側に相手先の受信機能情報データベースを用意して,効率化を図ることを提案する.


ディジタルHDTV用デコーダVLSIチップの開発

西和彦(株式会社グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ)
中尾早人(株式会社グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ)
小林伸志(株式会社グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ)
岡田敏男(株式会社グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ)
佐藤正人(株式会社グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ)
藤原洋(株式会社グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ)

通信,放送,蓄積メディアの大容量ディジタル化が進展し映像符号化標準MPEG2の確立したことにより, 高品質のディジタル映像情報利用環境が整ってきた.本論文では,HDTV品質高解像度映像情報の放送・通信・蓄積システム実現に必須のデコーダVLSIチップ(MPEG2標準MP@HL準拠)について, 1994-1998年に実施した開発の結果を述べる.まずHDTVデコーダの1チップ化と多様なフォーマット対応を意図した設計目標と開発期間の短縮をねらった開発手法を, 次に設計の詳細および試作したチップの検証実験方法を述べ,最後に検証結果を報告する. 得られたVLSIは,試作に用いたCMOS 0.5μmのエンベディッド・アレイ方式プロセスでは2チップ構成で合計206万トランジスタからなり, これと6個の16 Mbit SDRAMをマルチチップモジュールに実装して,HDTV動作が確認できた. この設計結果を最新の0.25μmカスタムLSI技術に適用すれば,8mm角程度の1チップ化が実現できる見通しが得られている.


領域対応による三眼立体視

丹羽寛孝(千葉工業大学情報工学科)
桂井浩(千葉工業大学情報工学科)

本研究では三眼による領域マッチングのアルゴリズムを提案し,その有効性を3次元情報の抽出に適用することで検討している. この三眼立体視アルゴリズムでは両眼立体視より情報が増えることに加えて,3つのカメラ配置の幾何学的な関係を用いることにより, 隠れの改善を含むマッチング精度の向上が可能である.実験の結果,雑音を含む画像においても良好なマッチング結果が得られ, また比較的高い精度で3次元情報を復元できることが確認された.


立体視を用いた3次元CGモデラ

細田真道(千葉工業大学電子工学科)
嶋野裕一(千葉工業大学電子工学科)
糸井清晃(千葉工業大学電子工学科)
小林幸雄(千葉工業大学電子工学科)

本論文では,3次元グラフィックスを生成するための基本となるモデラについて, 直感的で誰でも簡単に扱え,かつ安価に実現するための方法を検討している.近年, 3次元グラフィックスへの注目は非常に高く需要も増大してきているが,その3次元グラフィックスを制作するために使用されるモデラは, 現状では誰にでも簡単に扱えるものではない.そこで,その問題点を解決するため, 表示に立体視を用い,入力に3次元マウスを用いたモデラを試作し,従来のモデラと比較検討を行った. また,安価な3次元入力装置についての提案を行っている. キーワード:立体視,モデラ,3次元マウス


An Effective Approach for Texture Image Segmentation by Using Pyramid Linking and Neural Networks

Jing Zhang(Information Science & Intelligent Systems University of Tokushima, Japan)
Shunichiro Oe(Information Science & Intelligent Systems University of Tokushima, Japan)

This paper presents a new method to segment an texture image with randomness into several homogeneous by using pyramid linking and band-pass neural networks. In this method, it first segments the image at coarse resolution and then links the result to finer resolution until the final segmentation is done. For pyramid linking method, the most important thing is the definition of the discriminant function that can determine the similarity between nodes of two adjacent levels in the pyramid. In this paper, to find out the most similar parent-child relationship, the band-pass neural networks is used in pyramid linking process. The band-pass neural networks is a feed-forward multi-layer supervised neural networks. It can pass patterns from only one category with no or little distortion and has a nonlinear filtering ability. The texture features of the image are extracted by using a two-dimensional autoregressive model and fractal dimension. This segmentation method can improve the Robustness of the system a lot and have a good abilities of noise resistant. The validity of this method will be verified by several numerical examples. Keywords: image processing, texture image, multi-resolution, pyramid linking, neural networks


1画素マッチング処理とベクトルメディアンフィルタを用いた高精度オプティカルフローの効率的推定

石川哲(富山職業能力開発短期大学校)
米田政明(富山大学工学部知能情報工学科)
長谷博行(富山大学工学部知能情報工学科)
酒井充(富山大学工学部知能情報工学科)

動画像の解析において重要な情報を与えるオプティカルフローの推定法の一つに, 時空間画像の濃度こう配から動き量を求めるこう配法がある.しかし,こう配法にはフローが不連続な物体境界領域においてその推定精度が低くなるという問題点がある. 本論文ではこう配法の拘束式を利用した1画素ごとのマッチング処理とベクトルメディアンフィルタリングを組み合わせてオプティカルフローを推定する手法を提案する. 本手法では,まず各画素においてこう配法の拘束式を求め,この式に基づいてマッチングを行う探索方向を決定する. 次に画素単位でマッチング処理を行い,各画素に対してマッチングの最適な変位量を求めることによりオプティカルフローを抽出する. 更に,フローの不連続性を考慮したベクトルメディアンフィルタを使用してノイズ除去を行い, 最終的なフローを推定する.本手法により計算時間をそれほど増やすことなく,フローの不連続部分における推定精度を向上させることが可能となる. また,実画像を用いて従来のこう配法や不連続性を考慮した1画素マッチング法との比較を行った実験結果を示し, 本手法により,動き境界での推定精度がかなり改善されることを示す.


カメラ移動とComplex-Log Mappingを用いた距離計測法

山口直木(徳島大学工学部知能情報工学科)
大恵俊一郎(徳島大学工学部知能情報工学科)
寺田賢治(徳島大学工学部知能情報工学科)

近年,画像処理を用いた距離計測法が多く開発されているが,計測平面上に存在するパターンに影響されずにその距離を統一的に計測できる有効な方法は, まだ実用化されていないようである.そこで,本論文では,計測対象の表面にどのようなパターンが存在したとしても, 単眼カメラの移動のみで,その平面とカメラ間の距離を計測することができる手法を提案する. 光軸上を既知の距離だけカメラを移動させ,移動前後の撮影地点で成立する2つのレンズ公式を連立させて解くことによって, 距離を計測するところに提案手法の特徴がある.この距離計測法では,それぞれの画像上での同一対象物の投影像の大きさの比を求める必要がある. 2枚の画像から直接対応する部分を抽出し,その大きさなどから比を計算することができれば非常に簡単であるが, 計測対象が不規則性を有するテクスチャ平面の場合は,対応する部分を直接抽出することは不可能であり, この方法を用いることはできない.そこで,我々は,取得された2枚の画像が同心円特徴の関係にあることに着目し, Complex-Log Mapping法を用いて倍率を計算する手法を提案する. 計測実験において,不規則性を有するテクスチャ模様および大きな文字画像の4種類の例に対して提案手法を適用した結果, 非常に良い精度で距離情報が得られており,本手法の妥当性が検証されている.



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