近年,ウェアラブルカメラを用いた行動認識が盛んである.ウェアラブルカメラを用いることにより簡単に人間の行動情報を取得することができる.本論文では,ウェアラブルカメラにより撮影された一人称視点映像に着目し,特に日常生活に欠かせない調理動作を認識する手法を提案する.具体的には,一人称視点映像から手の軌跡・移動方向ヒストグラムを算出し,調理動作を認識する.始めに軌跡データを固有空間へ変換し,固有空間上の軌跡データに対する主成分の分散と軌跡の長さから決定木により大まかな分類を行う.分類後,連続DPマッチングを用いて,調理動作の認識を行う.しかし,連続DP マッチングではデータの系列情報の類似度の計算は可能であるが,方向成分に対する手の移動量は不明である.そこで,移動方向ヒストグラムを導入する.移動方向ヒストグラムは手領域のオプティカルフローから算出し,手の移動方向を16,32 分割しヒストグラムを作成し,k-Nearest Neighbor,Support Vector Machine,Neural Network それぞれの識別関数により識別を行った.結果として,軌跡データのみで46%,移動方向ヒストグラムのみで73%,両方のデータを組み合わせて84%の識別率であり,提案手法の有効性を確認した.
大井翔 池ヶ谷剛 佐野睦夫
大阪工業大学大学院情報科学研究科