本論文では,画像処理を用いた微小物体の奥行き推定を目的とし,複数枚の焦点の異なる画像からの奥行推定法(DFF:depth from focus) について述べる.DFF 法では各画素値の鮮明度を画像間で評価して奥行きを推定する.ただし,大きな輝度変化をもつエッジの周辺や模様が少ない箇所では鮮明度が適切に求まらず,奥行きの推定精度が低下する問題があった.この問題の解決のため,提案法では画素の鮮明度の評価尺度において,注目画素の輝度値と周辺画素の平均輝度値の関係に着目し,これらがポアソン分布に従うと仮定する計算方法を提案する.また,周辺画素を考慮する際に複数の窓幅を用い,評価値の統合にFrommer らのDFF 法のアルゴリズムを用いる.提案法の有効性をシミュレーション画像を用いた定量的評価,及び,実際の撮像画像を用いた定性的評価により示す.
松原洋一*,白井啓一郎**,田中清**
*信州大学大学院総合工学系研究科, **信州大学学術研究院(工学系)