写実的な自然景観の表現はコンピュータグラフィックスコミュニティでは最も挑戦的な分野の一つである.特にウェザリング(風化) は,そのようなシーンを合成するための重要な要素である.本論文ではウェザリング現象の一つである金属腐食の外観を再現するための手続き的テクスチャ合成手法を導入する.本手法では,一種のセルオートマトンを用いて金属の腐食過程のシミュレーションを行う.このセルオートマトンを構成する各セルは,金属,腐食,染みの三つの状態をとり,腐食や染み状態のセルは各タイムステップにおいてその状態を3Dモデルの形状を考慮した確率的モデルに基づいて近傍の領域に拡散する.そして,各タイムステップにおけるセル全体の状態を可視化することで,経時的な腐食過程を模した一連のテクスチャ画像のセットを得ることができる.本手法の効果を検証するため,平面,半円筒,バニー,フランジ付きパイプなどいくつかの3Dモデルの経時的な腐食過程をシミュレートした例を示す.
金澤功尚†, ‡ 田邉竜馬†, ‡† 森谷友昭† 高橋時市郎†, ‡‡
† 東京電機大学, ‡ 東京医療保健大学, ‡† 株式会社IHI エスキューブ, ‡‡ アストロデザイン株式会社