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西田進(宇都宮大学)
長谷川まどか(宇都宮大学)
加藤茂夫(宇都宮大学)
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データ圧縮のためのエントロピー符号化用符号として,可変長符
号が使用されることが多い.しかし,可変長符号を用いて符号化を
行った場合,伝送中に生じた誤りが受信系列に及ぼす影響は非常に
大きく,誤り耐性のある可変長符号の開発が望まれている.リバー
シブル符号は双方向復号可能な符号であり,通常の順方向復号はも
とより,符号系列の最後尾から前方へ向かっての逆方向からの復号
も可能な符号である.リバーシブル符号を用いて符号化を行った場
合,符号系列中に誤りが生じても,逆方向から復号することで,あ
る程度のデータ回復が可能となることから,この符号は誤り耐性の
高い符号として注目されている.リバーシブル可変長符号には,Wen
らにより提案された RGR 符号(Reversible Golomb-Rice 符号)や
我々の提案による P-RGR符号などがある.
また,静止画像符号化においては,画像ごとに統計的性質を求め,
それに適した符号を構成する方法が一般的であるが,このような手
法は,必ずしも画像信号の局所的な変化に対応していないため,符
号化効率の観点からは十分な符号化方式とはいえない.そこで,画
像の局所的な性質の変化に対応して符号化パラメータを変えながら
符号化を行う適応的符号化が検討されている.
一方,JPEG2000において画像圧縮に対する要求条件がまとめられ
ているが,その要求条件の一つとして ROI (Region Of Interest)
復号機能が挙げられている.これは,符号系列中から画像中の必要
な領域に対応する符号のみを抽出し復号できる機能であり,これを
実現するためには部分復号可能な符号が必要となる.
このような観点から,本研究では,適応的符号化に適用可能で,
かつ部分復号可能なリバーシブル可変長符号の符号構成法について
検討を行った.提案方式では,まず,画像に対してブロック分割を
行い,ブロック単位での部分復号を可能とし,また,各ブロックに
対して領域分割を行い,その領域ごとに適した符号を構成すること
で適応的符号化を可能としている.更に,伝送誤りに対してオーバー
ヘッド情報を利用した誤りの早期検出を行うことでより多くのデー
タ回復が可能となった.符号化効率および誤り耐性の観点から
P-RGR 符号を用いた提案方式の有効性を確認した.
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進藤敦史(宇都宮大学)
油井貴幸(宇都宮大学)
長谷川まどか(宇都宮大学)
加藤茂夫(宇都宮大学)
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疑似中間調表示手法は,ファクシミリやその他の2値デバイス上で多値画像を表
示,記録する際に使用されているが,なかでもディザ法は,原画像と同じ画素数で中
間調を表現できることから一般に広く使用されている.本研究で注目している平均値
制限法は,J. F. Jarvisらにより提案されたディザ法の一種であり,輪郭強調を行い
ながら2値化処理を行っているため,文字部の可読性やエッジ等の再現に優れている
という特徴がある.しかしながら,平坦部や滑らかなグラデーション変化等の表現は
十分ではない.
平均値制限法のアルゴリズムでは,まず着目画素とその周辺画素の平均輝度値を求
め,これにより閾値を決定し,着目画素のon/offを決定している.従来方式ではこの
閾値の決定の際に,着目画素の輝度分布が平均輝度値を中心として幅γの一様分布に
従うと仮定していた.しかし,自然画像を用いて着目画素の輝度分布を測定した結
果,ラプラス分布に近い形状をしていることがわかった.このことから,実際の分布
を考慮した平均値制限法について検討を行った.そして,一様分布の代わりに対称な
ラプラス分布を使用する方式や,非対称なラプラス分布を使用する方式,平均輝度値
によってγや分布を適応的に選択する方式などを提案した.
提案方式により作成した画像は,従来の平均値制限法と比較して,輝度変化が滑ら
かな部分の画質が改善されていることがわかった.また,文字部の可読性も向上して
いることが確認できた.
次にこれらの画像の主観評価実験を行った.提案方式どうしの比較では,対称なラ
プラス分布を用い,平均輝度値ごとにγを変更する方式が最も良好な結果を得られて
いることがわかった.また,他のディザ法により作成された画像との比較では,提案
方式は,誤差拡散法とほぼ同程度の評価を得られていることがわかった.
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鈴木峰生(長崎県工科短期大学校)
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人の表情はコミュニケーションの手段として重要な役割を担っている.この表情につ
いての研究は古くは心理学などの分野でなされていたが,最近はCGやCADなどがパーソ
ナルコンピュータ上で利用されるようになり,これを利用して医療分野やCGの分野で
も工学的な観点から表情を分析したり再現したりする研究がなされつつある.
本研究はこの人の様々な表情を自動生成することを目的とするものである.これにより
例えば「10%の笑い顔」などというように表情の数量化が可能になる.この目的に従い
本稿では骨の構造と筋の動きを考慮し解析手法として有限要素法を用いて笑いの表情を
表現することを試みている.
笑いの表情生成の解析計算にあたっては骨と皮膚と筋を想定した口元周りの模型を作成
し筋の動きによりどのような笑いの表情が生成できるか確認も行った.さらに人の笑い
の表情を多数収集しその特徴を把握することにより生成する笑いの表情の指針とした.
今回の解析計算のモデルは一次近似として頭蓋を紡錘形の剛体,皮膚をシリコーンゴム
として作成している.また,解析計算は汎用有限要素法プログラムを利用し,超弾性体
の接触問題として計算を行っている.
結果として,有限要素法の解析計算結果の変形形状により笑いの一表情であるが表現す
ることができた.これにより有限要素法の解析計算結果で表情を表現できることが確認
できたと考えている.
今後は骨の形状や筋の形状をより詳細に反映させて表情を生成するとともに笑い以外の
表情も生成し表情の自動生成に向けて進めていく方針である.
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高村誠之(NTTサイバースペース研究所)
小林直樹(NTTサイバースペース研究所)
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人間の視覚が知覚しうる限界の色差が空間的な距離差に一致する均等色空間、
つまり「目で知覚できる最小の色差がユークリッド距離1に対応するような空
間」は、工業上のみならず、画像信号表現、視覚的無歪み画像符号化、画品質
評価においても極めて重要である。しかしながら、従来用いられているCIE
XYZ, LAB, LUV等の色空間は、知覚的な均等性において改善の余地を多く残し
ている。
例えば画像信号表現(符号化)において視覚的無歪みを実現しようとした場合、
色空間均等性と効率の関係について以下のような議論が成り立つ。
- 非均等色空間での均等量子化: 最も密なところに合わせなければならない
ため疎な部分については符号が無駄割り当てられる。
- 非均等色空間でのベクトル量子化: 疎密に基づくので前述の無駄はないが量
子化の粗さを変える毎にコードブックを生成し直す必要がある。
- 均等色空間での均等な量子化: 無駄はない。2次元なら6角量子化(蜂の巣状)、
3次元なら最密充填量子化によりベクトル量子化と同効率の量子化がわずか
な計算量で実現できる。
また人間の視覚特性には経年変化、個人差、人種差が存在することも考慮す
ると、使用状況に対応する知覚閾に基づき、汎用的に均等色空間を作成し利用
できるようにすることが重要となる。
本稿では、そのような空間を構成する従来の試みの問題点を指摘した後、色
知覚限界を反映した汎用性の高い均等色空間構成方法を提案する。xy色度図に
おいて全色度領域の色差を視覚的無歪み表現するのに必要な情報量は約20bit
必要であるが、計算機シミュレーションにより作成した空間ではこれを約17ビッ
トに削減できた。
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大貫友和(宇都宮大学)
長谷川まどか(宇都宮大学)
加藤茂夫(宇都宮大学)
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近年,インターネット環境の整備・発展により,画像,映像,音楽
などのディジタルコンテンツの流通が盛んになってきている.それ
に伴い,不正コピーを防止し,著作権を保護するための技術として,
コンテンツに著作者の署名やID番号などの情報を埋め込む電子透か
し技術の研究が進められている.
一般に,静止画像に対する電子透かしでは,特に周波数成分に透か
しを埋め込む方式が有望視されている.この方式では,DCTやフー
リエ変換などによって画像情報を周波数成分に変換し,その変換係
数に処理を施して透かし情報を埋め込んでいる.しかし,直交変換
を利用して透かし情報を埋め込むと,透かし合成画像の画素値がダ
イナミックレンジを越えることがあり,埋め込み情報が変化するお
それがある.
本研究では,アダマール変換を利用した電子透かしにおけるデータ
埋め込み法についての検討を行い,「増減反転法」と「変化量保存
法」の2手法を提案している.増減反転法は,合成画像の画素値が
ダイナミックレンジを越えないように,透かし埋め込み時に変換係
数の変更方向の正負を切り替える手法である.変化量保存法は,透
かし埋め込みによる変換係数の変化を保存するために,合成画像の
画素値を局所的に変化させる手法である.増減反転法と変化量保存
法は互いに相補的な関係にあり,いずれか一方の手法が必ず適用可
能である.したがって,これらの手法を用いることで,透かし合成
画像から正確に透かし情報を抽出することができる.
本方式を用いて実験を行い,攻撃を受けていない場合には,透かし
合成画像から正しく透かしを抽出できることを明らかにした.また,
従来方式に比べて透かし情報の耐性が向上することを確認した.今
後の課題としては,切り抜きなどの編集処理に対する耐性について
の検討,DCTやウェーブレット変換を利用した処理の検討が挙げら
れる.
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川崎道雄(高知工科大学)
島村和宣(高知工科大学,TAO)
加藤寛治(TAO)
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本研究では,人々の積極的な使用を喚起し,より多くの普及を見込める仮想空間
通信システムの実現を目指して,空間融合を伴い,かつカスタマイズ性に富む仮想
空間ワールドリンク方式を提案した.
既存の仮想空間システムが普及していない原因として次の問題点がある.
- ワールドの発展性を重要視すると,リンクを空間的に接続しない方式が空間的制
約を受けないため有利であるが,移動先ワールドに関する情報が事前に得にくく,
ワールド間移動は促進されない.
- リンクを空間的に接続しない方式として,サービス全体で大空間を形成するもの
があるが,新規ワールドの追加に空間的制約が課せられる.
この問題点を解決するために以下の特長を持つリンク方式を提案した.
- リンク先ワールドを空間的に接続してリンク元ワールドから目に見えるようにす
ることにより,移動の際の操作負担を少なくしてユーザのワールド間移動を促進する
ことが期待できる.
- 空間接続可能であるにも係わらず,空間的制約条件を緩く設定できるようにワー
ルド間に一方向リンクを許容する.
このリンク方式をデモプログラムで一部機能実現し,その特性について考察した.
要点は以下の3点である.
- ユーザが自分のワールドに別ワールドをリンクする時,一方向リンクゆえに空間
的制約に縛られる事が少なく,次々とリンクしていくことができる.
- あるユーザのワールドに他のユーザのワールドからリンクが張られる時,一方向
のリンクは受ける数に制限は無い.
- 一方向性のリンクを採用することでループ現象が起こる場合がある.ループ現象
によってワールド間コミュニケーションに矛盾をもたらす.
以上,リンク先ワールドが見え,カスタマイズ性の高い空間融合リンク方式を提
案し,デモプログラムにより有効性を検証した.通信機能を加えたプログラム開発
を行い,提案した方式の有効性の検証をさらに行なっていくことが今後の課題である.
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犬童 拓也(NTT)
安野 貴之(NTT)
渡部 保日児(NTT)
石橋 聡(NTT)
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映像制作においては、撮影や編集といった必要な作業が分業化されて
おり、それぞれのフェーズで専門のスタッフが活躍する。そして、監
督を中心とした、各フェーズのスタッフ間での協調作業が映像のクオ
リティをあげる上で不可欠である。
これまでは、実際にスタジオに集い協調作業を行って来たが、編集機
器のデジタル化およびネットワークの高度化に伴い、遠隔での協調作
業が可能となってきた。
我々は、映像制作における映像の相互確認の場面(プレビュー工程)に
着目し、作成した映像を予め送信し各拠点で保存するStore&Forward型
の素材映像の伝送装置を利用した協調作業支援システムによって、プレ
ビュー工程をネットワークを利用した遠隔分散環境で実現する環境を構
築した。
これにより、監督や撮影スタッフ、編集スタッフ、またはクライアント
が遠隔地に分散した状態でも、プレビュー工程を行えるようにし、デー
タ転送および移動のコスト軽減と、プレビュー工程と各自の作業とのシー
ムレス化を目指した。
本発表では、実際に映像制作の現場で使用して頂くことで、アプリケー
ションやネットワークに必要な要件を抽出することを目的として行った
3つの実証実験(1)「MMWP(Multi Media World Processor)」作成現場で
の適用事例、(2)「金田一少年の事件簿」作成現場での適用事例、(3)
夕張映画際ワークショップでの適用事例を紹介し、ネットワークやア
プリケーションに求められるシステム要件についての考察結果を述べる。
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