画像電子学会 第23回VMA研究会    
2008-12-01        


フォントリソース参照方式のTS素案

TS Working Draft: Font Resource Referencing Scheme

小町 祐史

       

鈴木 俊哉

       

長村 玄

Yushi KOMACHI

       

Toshiya SUZUKI

       

Gen NAGAMURA

情報処理学会試行標準委員会 WG7小委員会
Working Group 7, IPSJ (Information Processing Society of Japan) Trial Standards Committee


1. まえがき

情報処理学会情報規格調査会は,2007年11月に傘下の学会試行標準専門委員会に次に示す試行標準(TS: Trial Standard)の開発を行う方針を決め,作業グループWG7小委員会[1]を設立して,開発作業に着手した。

(1) 名称
フォントリソース参照方式
(2) 適用範囲
書体を表す多くの属性の体系の枠組みを決め,フォントプロバイダ間およびプロバイダ-利用者間で異なる書体分類を相互変換できるようにし,柔軟性の高いフォント参照方式を規定する。
(3) 効果
(3a) フォントリソースの指定を一般的に行われるフォント名(フォントファミリ名)による指定ではなく,ISO/IEC 9541[2](JIS X 4161~4163)のアーキテクチャで扱えるフォント属性によって行う。
- 現在,多くのフォント選択インタフェースや文書データ形式はフォント資源をフォント名で指定している。しかし,フォント名では書体の類似性や代替可能性を正しく判断できない。フォント資源の代替可能性を評価するために必要な属性を検討し,ISO/IEC 9541で不足しているものを明らかにする。
- 既存の書体属性記述方式としてMonotypeによるPanose分類[3]がある。しかし,Panoseは欧文書体に特化したものであり,ラテンアルファベット以外の様々な言語の書体の分類としては情報量が不足している。
(3b) 代替可能性をユーザが適切に評価するためのフォント属性を示し,それを用いたアルゴリズムを例示する。また,ユーザのフォント選択の際に書体の属性に基づいて選択できるインタフェースについても検討する。
- 多くのフォント選択インタフェースではサンプル文字列の表示程度の情報しか与えないため,書体が増えた場合に属性を念頭に置いた選択が困難になる。
- Panose分類は,書体の類似性の評価を念頭に置いて設計されているが,実際に類似性を評価するアルゴリズムは例示されておらず,Panose値によるフォント検索を実装している処理系も殆どない。
- HTML やCSS では抽象的な書体分類によりフォント指定が可能であるが,分類が3種類しかなく,ラテンアルファベット以外の書体にうまく適合しない。
(3c) 様々なフォントファイルに対しISO/IEC 9541の属性を定義するアルゴリズムも検討する。
(4)スケジュール
2007年度: フォントファイルからのISO/IEC 9541属性抽出と属性利用の枠組み検討
2008年度: フォント代替アルゴリズムの検討,原案作成
(5)その他
情報規格調査会におけるISO/IEC JTC1対応組織であるSC34/WG2小委員会のフォントメンバに加えて,フォント業界の専門家の参加をいただく。得られた成果は,試行標準としての公表の後,JTC1/SC34 にも提案する。

これまでに当初に予定した課題をすべて議論したわけではなく,さらに継続検討が必要であるが,約1年間の活動の範囲をまとめて試行標準委員会WG7小委員会の委員以外の多くの関係者のレビューを受けることはこの試行標準(TS)の内容充実に不可欠と考え,フォント関連情報処理の最新動向をテーマとする画像電子学会第23回VMA研究会への寄稿することにした。

2. TSの構成

学会試行標準の構成として,次に示すclause構成を計画している。

1. 背景
2. 適用真意
3. フォント属性
3.1 書体(typeface)の特徴を示す属性および属性集合
3.2 書体分類と分類ノード
4. フォント参照利用アルゴリズム
4.1 一般
4.2 フォントテーブルを用いたフォント特定
5. 利用者インタフェース
附属書A 書体見本帳作成指針
附属書B 異なる書体分類間のマッピング
解説

以降に主要なclauseについてその概要を示す。

3. 背景

フォントアプリケーションによるフォントの指定を行うとき,最も単純にはフォントリソース名による指定が採用されるが,フォントリソース名では書体の類似性や代替可能性を正しく判断できない。

フォントアプリケーションによるフォントの指定(選択・代替・置換)のために,フォント情報交換規格であるISO/IEC 9541(国内ではJIS X 4161~4163)はフォント参照と呼ばれる属性集合を規定している。しかしISO/IEC 9541-2に用意されたフォント参照では,書体の記述は不十分である。例えば,ISO/IEC 9541-2 のフォント参照は,指定したいフォント資源のインスタンスの属性を示すだけであって,そのフォント資源を選択した文書作成者の意図を表す属性は用意されていない。文書交換系でフォント参照の利用者が文書作成者の意図を知って適切なフォント資源を選択するには,ISO/IEC 9541のフォント参照の上位概念を扱う属性をも含むことが望まれる。ISO/IEC 9541のフォント参照においては,後の拡張性が考慮されているが,未だにそのフォント参照の拡張は議論されていない。

書体属性記述方式としてMonotypeによるPanose分類があるが,Panoseは欧文書体に特化しており,ラテンアルファベット以外の文字に関する書体記述には不十分である。

そこでISO/IEC 9541のフォント参照の拡張を目標として,既存のフォントの指定・選択・代替に求められるフォント属性を調査し,フォントリソースの参照方式のTSとして公表することが,フォント業界およびフォント利用者から要求されることとなった。

4. 適用範囲

文書を作成・交換・表示する際に,そこで用いるフォントをリソース名だけでなく,そのフォントを 表現する各種フォント属性をも用いて指定することによって,次の事例でのフォントリソースの特定 を容易にすることが望まれる。

この試行標準は,これらの事例における利用者要求に応えるフォント指定(選択・代替・置換)を可能 にするためのフォント属性をフォントアーキテクチャの一部として規定し,その集合をフォント参照 として規定する。フォント参照情報からフォントリソースを選択するためのアルゴリズムおよびそれ を利用者に提供するための利用者インタフェースを規定する。

5. フォント属性

ISO/IEC 9541は書体デザインを示す属性として,デザイン名,ファミリなどを用意している。Annex 1の書体デザイン分類はデザインだけを分類基準としているわけではなく,歴史的経緯が含まれる。ここでは,図形的特長に基づく書体デザインを示すフォント属性を検討し,フォント代替に際しての参照情報とすることを狙う。

フォントの混植に際しては,必ずしも図形的特長に基づく書体選択だけが行われるわけではなく,少ないほうの言語部分を幾分強調して,浮き立たせることを狙うこともある。しかし概ね図形的特長に基づく書体選択が適用されると考えて差し支えない。

5.1 書体(typeface)の特徴を示す属性および属性集合

現在,(かなを含む)漢字書体と(漢字を含まない)かな書体の2つの側面から書体デザインの図形的な 特徴を捉えるための議論を進めている。書体の特徴を何によって捉えるかという議論は古くからあり, 本年度前半は主としてこれらの文献調査と実効性を調査した。

5.1.1 既存の書体分類の調査

特定のベンダの製品サンプルを越える書体分類は多くない。 最近の例として 小宮山博史による分類[4]と 祖父江慎による分類[5]を比較した。 小宮山分類は装飾書体の, 祖父江分類は本文書体の詳細な分類に力点を置くという違いがあり, そのため分類の粒度はかなり異なっている。 しかし,近年の和文基本書体となっている明朝体,ゴシック,丸ゴシックの分類に関しては, 表現名称は異なるものの,大まかな分類として金属活字からデジタルフォントへの流れの中で

という傾向に注目し,金属活字・写植・デジタルフォントの大まかに3段階に分類している 共通点が見られた(ただし,写植とデジタルフォントの境目については若干のずれがある)。 本試行標準でもこれらの分類を参考にしたい。

また,これらの既存の分類ではあまり強調されていないが, デジタルフォント以降の本文書体のデザイン傾向の流れへの反発として, 金属活字の覆刻に基く系統が存在する。 これらを金属活字の系統に分類するべきか,さらに新しい流れとして 独立に分類するべきかは判断が難しい。

5.1.2 漢字書体におけるかな・漢字のデザインの関連性

現在の和文文書はその大半を平仮名が占めている。また,平仮名はその線画の少なさのため, デザインの違いが漢字よりも目につき易いと考えられる。 しかし,かな書体を基本として和文書体を分類して良いかどうかを考える時, かな・漢字を両方とも含む書体を取った場合, かなのデザイン傾向と漢字のデザイン傾向がどの程度符合しているかが問題となる。 かなと漢字のデザイン傾向に何も関連性が無ければ,個別に分類しなければならないからである。 そこで,かな・漢字の両方を含むフォントを,かなに注目してかな書体として分類した結果と, 漢字書体として分類した結果の両方を示している祖父江分類で調査した。 その結果,かな・漢字とも上述の歴史的な変化に注目した分類になっており, 区分の取り方が一致していることが分かった。

5.1.3 メトリックの時代的な変遷

上で述べたように,フォントのデザインの時代的な変化としてふところを広く取る 傾向が複数の書体研究者に指摘されている。そこで,字形の詳細な図形的特徴に 注目する前に,より一般的な特徴としてメトリックの変化について調査した。 その結果を下図に示す。縦軸は仮想ボディの高さに対する割合,横軸は仮想ボディの 幅に対する割合である。それぞれ1が仮想ボディいっぱいを意味する。 同一書体でウェイトが異なるものがある場合には, 色を変えて同じ図の中に示した。

リョービ築地のかなメトリック
リョービ築地のかなメトリック

リョービ本明朝のかなメトリック
リョービ本明朝のかなメトリック

リョービ平成明朝のかなメトリック
リョービ平成明朝のかなメトリック

ダイナラブ華康明朝のかなメトリック
ダイナラブ華康明朝のかなメトリック

図1 メトリックの変化

調査の結果,メトリック最大値に関しては目立った変化がないが,

  1. 築地五号明朝の覆刻(リョービ)
  2. 本明朝(リョービ)
  3. 平成明朝(リコーおよびリョービ)
の時代順に,金属活字時代では扁平や長体がかったデザインであったグリフが 正方形に近付き,全体としてメトリックの分散が少なくなってきていることが わかった。これらを(かな全体ではなく)少数のひらがなを元に評価できるかが 目下の課題である。

例外として,平成明朝より後にデザインされたダイナラブの華康明朝は金属 活字のように大きな分散を持つが,その分布は金属活字とは微妙に異っている。 この差を直接に評価すべきか,あるいは字形の詳細な違いに踏み込んで分類 すべきかは検討が必要である。

5.2 書体分類と分類ノード

9541-1 Anx1.の書体デザイン分類はデザインだけを分類基準としているわけではなく,歴史的経緯が含まれる。純粋なデザインの上位概念としての"印象"に基づく分類もあり得る。分類ノードの名前は書体名ではない。しかし書体名も書体分類のノード名も固有名詞であり得る。これらの状況把握に基づき,書体分類と分類ノードの検討を行った。

(1) 本試案は,ベースとして日本事務機械工業会・実装規約小委員会「日本語フォント実装規約」(案)の分類[6]を用い,ISO/IEC 9541の分類との整合性も考慮した。

(2) 「日本語フォント実装規約」分類案に倣い,分類は3階層とした。そのため,とくにディスプレイタイプの分類ではデザインの特徴を分類上で細分化できなかった。最終的には階層を増やす必要があると思われる。

(3) 用途が明確な書体,たとえば「新聞用書体」,「映画字幕書体」は分類上,区分した。しかし,OCR書体,ステンシル書体は,単に同種のものであればよいという判定はできず,個々の書体特性に依存するものと考え,分類を分けなかった。

フォントベンダーによっては「学参書体」を別分類とし,書体名称に用いているものもあるが,「学参用」を特化する弊害もあり,ここでは無視した。

(4) 明朝体,角ゴシック体,丸ゴシック体に関して,クラシック/モダンの区別を新設した。「スタンダード」は規定しなかった。何がスタンダードなのかという基準は決められないからである。 また,オールド/ニューという呼称も採用しなかった。一般的に「オールド」という表現は多用されており違和感は少ないが,「ニュー」は様式名称に馴染まない。

ここでは,アナログ時代の様式を踏襲しているものを「クラシック」に,デジタル時代に入ってから出現した様式を「モダン」に分けたが,その中間的特長を備えたものもあり,明確な基準は設定できていない。

ディスプレイタイプの分類においては,アナログ時代から存在するデザインと,デジタルフォント全盛になってから生まれたものがあるが,これらはクラシック/モダンの区別を行うことをしていない(ユーザーニーズとして存在していない)。

(5) 明朝体(漢字)は,アナログ時代の書体を覆刻したものは当然「クラシック」であるが,原則として背勢処理がなされている明朝体は「クラシック」に分類した。

明朝体の定義も区々であるが,ここでは三角形のウロコを持つことを必須とした。したがって,カタオカデザインワークスの「丸明オールド」は三角形のウロコを持たず,モトヤの「アポロ」もウロコを持たないという特徴によって,ユービックの「ユニスクェア」は角ウロコを持たないという特徴によって,それぞれ明朝体に分類しない。一方,リョービイマジクスの「ナウ-M」は明朝体に分類している。

「モトヤ明朝」はごくわずかな背勢処理がなされているストロークもあるが,実用文字サイズでの視認性を配慮し,「モダン」に分類した。

(6) 明朝体(かな)については,アナログ時代の書体を覆刻したもの,古い書家の作品をアレンジしたものは「クラシック」に分類した。さらに,デジタル時代になってから誕生した書体であっても,縦組適性重視の思想を持ったものは「クラシック」とした。逆に言えば,横組適性重視の書体はすべて「モダン」とした。

リョービイマジクスの「良寛」,「小町」,「行成」などは明朝体,ゴシック体と混植される前提で設計された字形デザインであるが,あくまでも形状特徴から「筆字体クラシック」に分類した。

(7) 角ゴシック体(漢字)についても,背勢処理がなされ,原則として墨溜りを持つゴシック体は「クラシック」に分類した。フトコロの設計など,全体のイメージを活字時代のゴシック体に近似させる手法は,現代には馴染まないため,背勢処理以外の要素でクラシック/モダンを峻別することはしていない。

大日本スクリーンの「ヒラギノ角ゴシック」は,背勢処理はなされているが墨溜りを持たないため,「モダン」に分類した。

(8) 丸ゴシック体(漢字)については,アナログ時代の,フトコロの狭い書体はほとんど見向きがされず,フトコロの広いデザインが主流になっているため,アナログ時代のもの以外は,すべて「モダン」とした。したがって,分類例では写研の「丸ゴシック体」だけが「クラシック」である。

カタオカデザインワークスの「丸丸ゴシック」は,コーナー円の径が極めて大きく,特異な印象を持つ書体になっているため,丸ゴシック体には分類しなかった。

(9) ゴシック体のバリエーションとも看做せる書体の中に,右ハライが「先細り」にデザインされているものがある。たとえばモリサワの「フォーク」,フォントワークスの「ぶどう」など,同様に明朝体のバリエーションとも看做せるダイナコムウェアの「麗雅宋」などである。これらはゴシック系,明朝系とはいえないため,ディスプレイ系書体に分類する。

(10) ディスプレイ書体において,とくに「サンセリフPOP」は,きわめて多様なデザインの書体が割り当てられる。商用キャッチコピー用書体は,「目立つこと」,「新規性が高いこと」などが求められるために分類は大規模にならざるを得ない。

したがって,本来であれば固有分類対象になる「アウトライン」,「シャドー」なども,すべてこの分類の中に入ることになる。これらを組み合せた「アウトライン・シャドー」などの書体も出現するからである。 若干異なるが,モリサワの「カクミン」は明朝体と角ゴシック体の中間書体と位置づけられるが,この分類では「セリフPOP」に分類した。

(11) 独立かなにおいて,分類上は「サンセリフ」を設けたが,現時点では該当書体はない。

1.0.0 伝統デントウ書体ショタイ(漢字のあるもの)漢字カンジのあるもの) 4.0.0 Serifs
  1.1.0 明朝体ミンチョウタイ   4.12.0 Mincho
    1.1.1 クラシック 4.12.1 Old Style
    1.1.2 モダン 4.12.2 New Style
    1.1.3 新聞シンブン明朝ミンチョウ  
  1.2.0 カクゴシックタイ   5.0.0 San Serifs
    1.2.1 クラシック  
    1.2.2 モダン  
    1.2.3 新聞シンブンゴシック  
  1.3.0 マルゴシックタイ   5.5.0 Geomesric
    1.3.1 クラシック  
    1.3.2 モダン  
  1.4.0 ヒツ書体ショタイ   6.3.0 Soft Brush
    1.4.1 楷書体カイショタイ 6.3.1 Kaisho
    1.4.2 教科書キョウカショタイ 6.3.2 Kyokasho
    1.4.3 行書体ギョウショタイ 6.3.3 Gyosho
    1.4.4 草書体ソウショタイ 6.3.4 Sosho
    1.4.5 隷書体レイショタイ 6.3.5 Miscellaneous
    1.4.6 篆書体テンショタイ 6.3.5 Miscellaneous
    1.4.7 硬筆コウヒツ手書テガフウ  
  1.5.0 宋朝ソウチョウタイ   6.5.0 Soucho
  1.6.0 インタイ    
2.0.0 ディスプレイ書体(漢字のあるもの)書体ショタイ(漢字のあるもの) 7.0.0 Ornamentals
  2.1.0 江戸エド文字モジ    
  2.2.0 トウセン    
    2.2.1 セリフPOP  
    2.2.2 ゴシックタイケイ  
    2.2.3 サンセリフPOP  
    2.2.4 硬筆コウヒツ  
  2.3.0 トウセン    
    2.3.1 明朝体ミンチョウタイケイ  
    2.3.2 硬筆コウヒツ手書テガフウ  
  2.4.0 字幕ジマク書体ショタイ    
3.0.0 かな書体ショタイ(独立)独立ドクリツ 6.4.0 Kana
  3.1.0 伝統デントウ書体ショタイ    
    3.1.1 フデ字体ジタイクラシック 6.4.1 Old Style
    3.1.2 筆字体モダン 6.4.2 New Style
    3.1.3 明朝体ミンチョウタイクラシック  
    3.1.4 明朝体ミンチョウタイモダン  
    3.1.5 ゴシックタイクラシック 6.4.1 Old Style
    3.1.6 ゴシックタイモダン 6.4.2 New Style
  3.2.0 トウセン    
    3.2.1 セリフ  
    3.2.2 サンセリフ  
    3.2.3 硬筆コウヒツ  
  3.3.0 トウセン    

図2 書体分類

1.0.0 伝統デントウ書体ショタイ(漢字のあるもの)漢字カンジのあるもの)  
  1.1.0 明朝体ミンチョウタイ    
    1.1.1 クラシック 秀英シュウエイ明朝ミンチョウダイ日本ニホン印刷インサツ
        凸版トッパン明朝ミンチョウ凸版トッパン印刷インサツ
        精興社セイコウシャ書体ショタイ精興社セイコウシャ
        石井イシイナカ明朝ミンチョウ写研シャケン
        ホンラン明朝ミンチョウ写研シャケン
        リュウミン(モリサワ)
        A1明朝ミンチョウ(モリサワ)
        ジョミン(モリサワ)
        TBクラシック明朝ミンチョウ(タイプバンク)
        イワタ明朝体ミンチョウタイオールド(イワタ)
        ヒラギノ明朝ミンチョウ大日本ダイニホンスクリーン)
        ユウ明朝体ミンチョウタイ(字游工房)
        筑紫チクシ明朝ミンチョウ(フォントワークス)
        マティス(フォントワークス)
        明朝体ミンチョウタイ(ニィス)
    1.1.2 モダン モトヤ明朝ミンチョウ
        イワタ明朝体ミンチョウタイ(イワタ)
        見出ミダしミンMA31(モリサワ)
        ヒカリアサ(モリサワ)
        ファイン(リョービイマジクス)
        ナウ-M(リョービイマジクス)
        TB明朝ミンチョウ(タイプバンク)
        JTCウィンM(ニィス)
        小塚コヅカ明朝ミンチョウ(アドビシステムズ)
        平成ヘイセイ明朝体ミンチョウタイ
    1.1.3 新聞シンブン明朝ミンチョウ イワタ新聞シンブン明朝体ミンチョウタイPro(イワタ)
  1.2.0 カクゴシックタイ    
    1.2.1 クラシック 凸版トッパンゴシック(凸版トッパン印刷インサツ
        石井イシイゴシック(写研シャケン
        ゴシックBBB(モリサワ)
        フトゴB-101(モリサワ)
        モトヤゴシック(モトヤ)
        ゴシックタイオールド(イワタ)
        リョービゴシック(リョービイマジクス)
    1.2.2 モダン ゴナ(写研シャケン
        シンゴ(モリサワ)
        ネオツデイ(モリサワ)
        ゴシックMB101(モリサワ)
        シンゴシックタイB(イワタ)
        シーダ(モトヤ)
        ナウ-G(リョービイマジクス)
        ヒラギノカクゴシック(大日本ダイニホンスクリーン)
        ニューロダン(フォントワークス)
        ロダンPro(フォントワークス)
        筑紫チクシゴシック(フォントワークス)
        JTCウィンS(ニィス)
        小塚コヅカゴシックPro(アドビシステムズ)
        平成ヘイセイカクゴシックタイ
    1.2.3 新聞シンブンゴシック イワタ新聞シンブンゴシックタイPro(イワタ)
        毎日マイニチ新聞シンブンゴシック(モリサワ)
  1.3.0 マルゴシックタイ    
    1.3.1 クラシック 石井イシイナカマルゴシックタイ写研シャケン
    1.3.2 モダン ナール(写研シャケン
        シンマルゴ(モリサワ)
        じゅん(モリサワ)
        モトヤマルベリ(モトヤ)
        シリウス(リョービイマジクス)
        ヒラギノマルゴシック(大日本ダイニホンスクリーン)
        JTCウィンR1(ニィス)
        ホソマルゴシックタイ(ダイナコムウェア)
        TBマルゴシック(タイプバンク)
        平成ヘイセイマルゴシック
  1.4.0 ヒツ書体ショタイ    
    1.4.1 楷書体カイショタイ コウランホソ楷書カイショ写研シャケン
        正楷セイカイショCB1(モリサワ)
        正楷セイカイショ(モトヤ)
        正楷セイカイ書体ショタイ(イワタ)
        弘道軒清朝シンチョウタイ(イワタ)
        グレコStd(フォントワークス)
        DFカオ楷書カイショ(ダイナコムウェア)
        DF文徽ブンキメイカラダ(ダイナコムウェア)
        DF徽宗宮キソウミヤ(ダイナコムウェア)
        DF痩金体ソウキンタイ(ダイナコムウェア)
        DF北魏ホクギ楷書カイショ(ダイナコムウェア)
    1.4.2 教科書キョウカショタイ 石井イシイナカ教科書キョウカショタイ写研シャケン
        イワタ教科書キョウカショタイ(イワタ)
        モトヤ教科書キョウカショ(モトヤ)
        ユトリロPro(フォントワークス)
    1.4.3 行書体ギョウショタイ 岩蔭イワカゲ行書ギョウショ写研シャケン
        ヒラギノ行書ギョウショ(大日本スクリーン)
        江川エガワ活版カッパン三号サンゴウ行書ギョウショ(大日本スクリーン)
        ショウミナミ行書体ギョウショタイ(ダイナコムウェア)
        JTC曲水キョクスイMYU(ニィス)
    1.4.4 草書体ソウショタイ DF草書ソウショ霜月シモツキ(ダイナコムウェア)
        JTCタンサイ草書ソウショノウ」(ニィス)
    1.4.5 隷書体レイショタイ ラン隷書レイショタイ写研シャケン
        イワタ隷書体レイショタイStd(イワタ)
        ハナ牡丹ボタン-DB(リョービイマジクス)
        DFカクヤスシ(ダイナコムウェア)
    1.4.6 篆書体テンショタイ DFシンテンカラダ(ダイナコムウェア)
        JTCタンサイ篆書テンショ(ニィス)
    1.4.7 硬筆コウヒツ手書テガフウ 日立ヒタチつれづれぐさStd R(タイプバンク)
        DF金文キンブンカラダ(ダイナコムウェア)
        クレーPro(フォントワークス)
  1.5.0 宋朝ソウチョウタイ   イワタ宋朝ソウチョウタイ(イワタ)
        ハナ胡蝶コチョウ(リョービイマジクス)
        DFシン宋朝ソウチョウタイ(ダイナコムウェア)
  1.6.0 インタイ   タンイン写研シャケン
        モトヤインタイ(モトヤ)
        コウインタイ(ダイナコムウェア)
        JTCインタイウタ」(ニィス)
2.0.0 ディスプレイ書体(漢字のあるもの)書体ショタイ(漢字のあるもの) スズ江戸エド写研シャケン
  2.1.0 江戸エド文字モジ   織田オダ勘亭流カンテイリュウ写研シャケン
        勘亭流カンテイリュウ(モリサワ)
        勘亭流カンテイリュウユウ工房コウボウ
        DF寄席ヨセ文字モジ(ダイナコムウェア)
        いなひげ(写研シャケン
        古今コキンヒゲStd EB(ダイナコムウェア)
        DFカゴ文字モジ(ダイナコムウェア)
  2.2.0 トウセン    
    2.2.1 セリフPOP カクミン(モリサワ)
        DF優雅ユウガソウ(ダイナコムウェア)
        DF麗雅レイカソウ(ダイナコムウェア)
    2.2.2 ゴシックタイケイ ゴナO(写研シャケン
        ナールSH(写研シャケン
        スーボ(写研シャケン
        DFひびゴシックタイ(ダイナコムウェア)
        マルマルゴシック(カタオカデザインワークス)
    2.2.3 サンセリフPOP 石井イシイファンテール(写研シャケン
        ナミン(写研シャケン
        ミンカール(写研シャケン
        フォーク(モリサワ)
        DFブラッシュRD(ダイナコムウェア)
        DFブラッシュSQ(ダイナコムウェア)
        DF POP 2 タイ(ダイナコムウェア)
        DFソウゲイタイ(ダイナコムウェア)
        キアロ(フォントワークス)
        ロゴJr(視覚シカクデザイン研究所ケンキュウショ
        メガマル視覚シカクデザイン研究所ケンキュウショ
    2.2.4 硬筆コウヒツ手書テガフウ ナカフリー(写研シャケン
        DFクラフトユウ(ダイナコムウェア)
        DFてがきマコト(ダイナコムウェア)
        DFペン字体ジタイ(ダイナコムウェア)
  2.3.0 トウセン    
    2.3.1 明朝体ミンチョウタイケイ アポロ(モトヤ)
        アドミーン(視覚デザイン研究所)
        マルミンオールド(カタオカデザインワークス)
    2.3.2 硬筆コウヒツ手書テガフウ ナカフリー(写研シャケン
        はるひ学園ガクエン(モリサワ)
         
  2.4.0 字幕ジマク書体ショタイ   映画エイガ字幕ジマク書体ショタイ(キネマ・フォント・ラボ)
3.0.0 かな書体ショタイ(独立)独立ドクリツ  
  3.1.0 伝統デントウ書体ショタイ    
    3.1.1 フデ字体ジタイクラシック 良寛リョウカン(リョービイマジクス)
        小町コマチ(リョービイマジクス)
        行成ユキナリ(リョービイマジクス)
        弘道ヒロミチノキ(リョービイマジクス)
    3.1.2 筆字体モダン iroha-31 nire(カタオカデザインワークス)
    3.1.3 明朝体ミンチョウタイクラシック 秀英シュウエイ(モリサワ)
        リュウミンオールドがな(モリサワ)
        アンチックAN(モリサワ)
        築地ツキジ(リョービイマジクス)
        築地ツキジタイ仮名カナ大日本ダイニホンスクリーン)
        ユウ明朝体ミンチョウタイかな(ユウ工房コウボウ
    3.1.4 明朝体ミンチョウタイモダン りょうDisplay(アドビシステムズ)
        コミクス(ニィス)
        マルミンYoshino(カタオカデザインワークス)
        ことのは(朗文堂ロウブンドウ
    3.1.5 ゴシック体クラシック TB築地ツキジ(タイプバンク)
    3.1.6 ゴシックタイモダン ネオツデイがな(モリサワ)
        りょうゴシック(アドビシステムズ)
  3.2.0 トウセン    
    3.2.1 セリフ  
    3.2.2 サンセリフ サンクスR(ニィス)
        ロゴアール(アドビシステムズ)
    3.2.3 手書テガフウ ゼンゴN(モリサワ)
        ひまわり(フォントワークス)
        マルミンFuji(カタオカデザインワークス)
  3.3.0 トウセン   DFクラフトワラベ(ダイナコムウェア)

図3 対応書体

6. 附属書A 書体見本帳作成指針

金属活字時代からフォントベンダは,その書体の特徴を示すために書体見本帳を作成し,フォント利用者に提供してきた。多くの書体見本帳では,字形集合を示すことに重点が置かれ,その後写研の見本帳ではじめてサンプルテキストに用いる文字や印字サイズについて工夫が施された。しかし,各ベンダが同じ方向で工夫しているわけではなく,その書体の成り立ち,特徴に関する説明があっても,それは必ずしも書体選択の指針になっていない。

そこで書体見本帳の作成指針を用意して,利用者による書体選択の指針になり得る書体見本帳の普及を図ることが望まれる。

書体見本帳を,

のふたつで構成することを前提に考える。

ここでは,Webサイトにおける書体見本帳[7]を念頭において,その作成指針を検討した。今回は,この中のインデックスの機能分析を中心に行った。インデックスにおいては,

などが考えられる。以下に実装例を示す。


図4 インデックスとしての書体見本

これらの個々について,若干の考察を行う。

(1) 組版の一部を用いる方法

伝統的な見本帳はすべて組版されたものを用いている。わずかなスペースの中で効率的に見せる工夫は,大日本印刷の『活字の栞』(4ページ)にその萌芽が見られ,写研の見本帳によってある程度の完成に至ったとしてよい。しかし,縦組と横組の違いなどを含めて評価しようとした場合には限界もあると同時に,その割には(インデックスとしては)面積をとりすぎるきらいがある。

インデックスとしての可能性検証の対象になるものとしてはイワタがある。このスタイルでは,中サイズの縦組は8字詰4行であり,この程度で書体特性が表現できることが確かめられれば実用になるであろう。イワタの中サイズの縦組例を図示する。

図5 イワタの中サイズの縦組例

(2) エレメント集合を用いる方法

エレメント集合で書体を表現した例を示す。

図6 エレメント集合

このスタイルは書体デザインの特徴を端的に表現しており,単なる一部の文字(この場合は漢字)を羅列するより極めて効果が高い。しかし組版した状態を仮想空間において想像(推定)できるのは,フォントデザインのプロ以外には難しい。このようなエレメント集合で書体を表現するとしても,インデックスではなく,資料の一つとしての位置付けが好ましい。

(3) 特定の文字を用いる方法

このスタイルは(多くは組見本との併置ではあるが)増大してきている。具体的な文字としては,

などが用いられている。「永」は永字八法からの選定であろうが,この文字だけで漢字のすべてのエレメントを表現できているわけではない。漢字,両仮名のインデックス代表字の選定に向けた検討が必要である。以下にそのポイントを記す。

7. むすび

TSの構成に示した"利用者インタフェース","附属書B 異なる書体分類間のマッピング"および"解説"については検討が進んでいなく,今後の検討課題としている。"フォント属性"についてもまだ具体的な属性(または属性集合)を規定するには至っていない。

この試行標準(TS)が扱おうとしているフォントリソース参照方式は,フォント情報交換において最も検討と実装が遅れた分野であり,このTSの公表が関連業界のこの分野での活動活性化に寄与することを期待している。

この試行標準(TS)の規定内容そのものについても,関係各位のコメントと積極的ご提案を歓迎する。

文献

[1] 学会試行標準/WG7小委員会, http://www.y-adagio.com/public/committees/ipsj-ts_wg7/cmt_ipsj-ts_wg7.htm

[2] ISO/IEC 9541, Font information interchange (9541-1 1991, 9541-1/Amd.1 2001, 9541-1/Amd.2 1998, 9541-1/Amd.3 2000, 9541-2 1991, 9541-2/Amd.1 2000, 9541-3 1994, 9541-3/Amd.1 2005)

[3] PANOSE 2.0 White Paper, Hewlett-Packard Document EWC-92-0015h, 1993-12

[4] 小宮山博史, "基本 日本語活字集成 OpenType版", ISBN 978-4-416-60827-2, 誠文堂新光社, 2007-05

[5] 祖父江慎, "フォントブック 和文基本書体編", ISBN 978-4-839-92205-4, 毎日コミュニケーションズ, 2008-05

[6] 1994年度 JBMA実装規約小委員会報告書, p.123, JBMA, 1995-03

[7] 長村玄,小町祐史,上村圭介,Font Museumの公開,画像電子学会 第6回画像ミュージアム研究会,2008-02